2015年9月29日火曜日

Oculopharyngeal Muscular Dystrophy

Oculopharyngeal Muscular Dystrophy(OPMD)


  • 常染色体優性遺伝
  • 50−60歳程度から発症
  • 眼瞼下垂、嚥下障害と近位筋筋力低下を主症状   OPMDの筋症状は軽度であり、呼吸筋麻痺もきたしにくいことから患者は天寿を全うすることが多い。
  • Rimmed Vacuole
鑑別診断:Oculopharyngodistal myopathy(OPDM)
  • 6-50歳台(平均22歳)で発症
  • 眼瞼下垂(80%)、外眼筋麻痺。表情筋、遠位筋優位の筋力低下と嚥下障害、構音障害(開鼻声)、舌萎縮。呼吸筋麻痺はよく起こる。心筋症や難聴との関連性も指摘あり。
  • Rimmed vacuole

病態生理 OPMD

原因:poly A binding protein nuclear 1 (PABPN1)のN末端上に位置するポリアラニンをコードするGCGが伸長すること(2)。
このGCG repeatは通常であれば10 alanines 程度
→OPMDでは12-17程度の伸長。

病理学的特徴 OPMD

Rimmed vacuole
  • 非可溶性の変異したPABPN1(Hsp70, ubiquitin, proteasomeのサブユニット)が核内封入体として認められたもの
  • 変異したPABPN1は、toxic gain-of-function to the proteinへと変換され、misfoldingとaggregationがおきる
  • the ubiquitin–proteasome degradation pathwayに影響を与えると考えられている。

治療 OPMD

  • 薬物療法はない
  • 各症状に対し対症療法

今後の研究

 misfolidingやaggregationを抑制することが治療のターゲット
 OPMD モデルマウスで、misfolding、aggregationに対する治療薬の研究が行われている。
  • Doxycicline, trehalose, cystamine:ポリアラニンの伸長したPABPN1のaggregationを抑え、筋力低下の発生をおさえた(3)。
  • PABPN1に対する抗体:筋繊維組織上のPABPN1を認識し、さらに、OPMDの細胞モデルにおいては、用量依存的に偏倚したPABPN1のaggregationを抑制した。

これらの研究はいまだ細胞レベル、動物実験レベル(しかもDrosphiaやC.elegansも多い)であり、さらなる発展によって変異PABPN1の aggregationを抑える治療の研究が進むことが望まれる。
さらに、病態理解をきちんと行うことによって、さらなる治療アプローチが生まれることも 期待される。

参考文献

1) Neuromuscular Homepage, http://www.neuromuscular.wustl.edu. Seen 2013/06/20
2) Aida Abu-Baker, Guy A.Rouleau. Biochimica et Biophysica Acta. 2007: 1772.173–185
3) Chartier A, Simonelig M. Drug Discov Today Technol. 2013 ;10(1):e103-8.

2015年9月28日月曜日

アルツハイマー病の病態生理から治療戦略を考える


アルツハイマー病の病態生理から治療戦略を考える

病態生理

 アルツハイマー病では、アミロイドβ前駆タンパク質(Amyloid beta precursor protein)がβおよびγセクレターゼにより切断され、アミロイドβ蛋白(Aβ)となる。そしてAβが凝集しβシート構造となり間質に沈着する(1)。
この際に沈着したAβが老人斑であり、神経原性変化と並んでアルツハイマー病の病理に特徴的である。
Aβが凝集した凝集体のうち比較的分子量の小さいものをオリゴマー、高分子量のものをプロトフィブリルとよぶ。プロトフィブリルは神経毒性を持っており、アルツハイマー病発症に寄与しているのではないかと考えられている。

治療戦略

  • 凝集体を作らせない 
  • Aβの代謝スピードをあげる 
  • プロトフィブリルの神経毒性をおさえる、
BAN2401は③プロトフィブリルの神経毒性を抑えるために開発されたプロトフィブリルに対する抗体である。

 

BAN2401のこれまでの研究

 プロトフィブリルに対する抗体療法は、スウェーデンの家族性アルツハイマー病患者から調整されたプロトフィブリルを抗原にして作成された抗Aβプロトフィブリル抗体mAb158(マウス抗体)からの創薬が進められた。
 In vivoでArcticとSwedishに変異があるトランスジェニックマウス(このマウスではプロトフィブリル濃度が上昇している)にmAb158(12mg/kg)を4ヶ月間週一回腹腔内注射することにより脳内のプロトフィブリルの減少することが示された(2)。
 このマウス抗体をヒト化したものがBAN2401である。
 

【参考文献】
1) Shin Araki. Folia Pharmacol.Jpn. 136: 21-25, 2010
2) Lord Anna, et al. Neurobio of Dis. 36: 425-34, 2009