2016年7月14日木曜日

ALSに対するエダラボン点滴療法


ALSに対するエダラボン点滴療法 
 
 
 20157月に日本で保険適応となったエダラボンは、2001年に日本で急性脳梗塞に対する治療として認可されたfree radical scavengerである。
 ALSの病態として、フリーラジカルの産生が指摘されておりこれまで、エダラボンの有効性が示唆されていた(Lancet 2011; 377: 94255)


 エダラボンをALS患者に投与したdouble blind placebo controlled study(Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration, 2014; 15: 610617)
 
対象
20065月から20089月までにALSを発症
20-75歳の日本人
 (206)

Inclusion Criteria:
⚫︎ALSの診断
definiteprobableprobable laboratory-supported
 (revised Airlie House diagnostic criteria)
⚫︎FVC70%以上
⚫︎経過は3年以内
⚫︎ALS重症度分類で1もしくは2
⚫︎ALSFRS-Eの低下が12週間で1から4の間

Exclusion Criteria:
⚫︎呼吸機能低下・呼吸困難感あり
⚫︎薬剤効果判定に影響を与える合併症がある状態(PD, 統合失調症, 認知症など)
⚫︎入院を必要とする合併症がある状態(肝・心臓・腎疾患)
⚫︎抗生剤治療を必要とする感染症がある状態
⚫︎その他増悪傾向にある全身疾患がある状態
⚫︎がんの治療をおこなっている状態
⚫︎腎機能低下(CrCl 50ml/min以下)
 
 
Study protocol
 治療前に12週間の観察期間
 その後24週間の治療期間
    Cycle1では、14日間毎日エダラボンを点滴投与し、その後14日間観察期間を挟む。
    Cycle2はその後、14日中10日間エダラボンを投与し14日間観察期間を挟む。
    その後Cycle6までは同様に14日中, 10日間エダラボン投与を行い14日間の観察期間を挟む。
 エダラボン投与群の1名のみ異なる疾患と診断されたため解析対象とならず、Placebo104名とエダラボン群101名をランダム化から24週間後に解析している。
 
結果
 Primary endpoint
 ALSFRS-R  :  -6.35±0.84 vs  -5.70±0.85 (Placebo群 vs エダラボン群) (p = 0.411).

   Secondary endpoint
%FVC  :  -17.49±2.39vs -14.57±2.41 (Placebo vs エダラボン群)(p =  0.123).
握力  :  -5.71±0.69 vs -4.81±0.69  (Placebo vs エダラボン群)(p = 0.165).
definite ALSと診断された方がよりALSFRS-Rの減少を防いだ(-8.7 vs -6.7. Placebovsエダラボン群. p = 0.33).
 

 副作用 : 差なし.

 これらを受けて、さらなる検証試験を行ったところ、ALSFRS-Rの減少を抑えたという結果となり、保険適応となった。
 ALSの治療薬はこれまで、リルゾールのみであった.
 NNTが非常に小さく期待される効果が小さいとしても, ALSの治療薬は数少ない。そのため、ALS治療においては大きな一歩であると考えられる。
 
参考文献
  Lancet 2011; 377: 94255
  Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration, 2014; 15: 610617