ALSに対するエダラボン点滴療法
2015年7月に日本で保険適応となったエダラボンは、2001年に日本で急性脳梗塞に対する治療として認可されたfree radical scavengerである。
ALSの病態として、フリーラジカルの産生が指摘されておりこれまで、エダラボンの有効性が示唆されていた(Lancet 2011; 377: 942–55)。
エダラボンをALS患者に投与したdouble blind placebo controlled study(Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration, 2014; 15: 610–617)
対象
2006年5月から2008年9月までにALSを発症
20-75歳の日本人
(206名)
Inclusion Criteria:
⚫︎ALSの診断
”definite”、”probable”、”probable laboratory-supported”
(revised Airlie House diagnostic criteria)
⚫︎FVCは70%以上
⚫︎経過は3年以内
⚫︎ALS重症度分類で1もしくは2
⚫︎ALSFRS-Eの低下が12週間で1から4の間
Exclusion Criteria:
⚫︎呼吸機能低下・呼吸困難感あり
⚫︎薬剤効果判定に影響を与える合併症がある状態(PD, 統合失調症, 認知症など)
⚫︎入院を必要とする合併症がある状態(肝・心臓・腎疾患)
⚫︎抗生剤治療を必要とする感染症がある状態
⚫︎その他増悪傾向にある全身疾患がある状態
⚫︎がんの治療をおこなっている状態
⚫︎腎機能低下(CrCl 50ml/min以下)
Study protocol
治療前に12週間の観察期間
その後24週間の治療期間
Cycle1では、14日間毎日エダラボンを点滴投与し、その後14日間観察期間を挟む。
Cycle2はその後、14日中10日間エダラボンを投与し14日間観察期間を挟む。
その後Cycle6までは同様に14日中, 10日間エダラボン投与を行い14日間の観察期間を挟む。
結果
Primary endpoint
ALSFRS-R : -6.35±0.84 vs -5.70±0.85 (Placebo群 vs エダラボン群) (p = 0.411).
Secondary endpoint
%FVC : -17.49±2.39vs -14.57±2.41 (Placebo群 vs エダラボン群)(p = 0.123).
握力 : -5.71±0.69 vs -4.81±0.69 (Placebo群 vs エダラボン群)(p = 0.165).
definite ALSと診断された方がよりALSFRS-Rの減少を防いだ(-8.7 vs -6.7. Placebo群vsエダラボン群. p = 0.33).
副作用 : 差なし.
これらを受けて、さらなる検証試験を行ったところ、ALSFRS-Rの減少を抑えたという結果となり、保険適応となった。
ALSの治療薬はこれまで、リルゾールのみであった.
NNTが非常に小さく期待される効果が小さいとしても, ALSの治療薬は数少ない。そのため、ALS治療においては大きな一歩であると考えられる。
参考文献
Lancet 2011; 377: 942–55
Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration, 2014; 15: 610–617